記憶喪失2009/06/19 21:24

街中で建物が取り壊された跡を見かけた時、そこに何があったのかを思い出そうとしてもできないことがある。

無理やり過去を押し流そうとしている訳でもないのに、ふと寂しさを覚えるのは、そんな時だ。

キリング・フィールド2007/09/29 21:30

分かりきっていることを改めて繰返す必要性も感じないが、
この世には受け入れがたい事実というものが存在する。
それに耐えられない人は
自分の弱さと引き換えに安心を手に入れようとする。
全ての不条理はこの繰り返しだ。
為政者は自分の無能を民衆の愚かさと天秤にかける。
それは必ず釣り合うことを知っているからだ。

一方でままならぬ事態というものもこの世には存在する。
僧院や自宅から路上へ駆り立てられる人々と
それに対峙する兵士達。
この定義はかなり厄介だ。
絶対に無能さと秤にかけるものの代わりになったりはしない。
その厄介さを無視しようとするところに銃声と悲鳴がある。

悲嘆に暮れている暇は僕らには無い。

聖地巡礼2007/09/09 19:41

悲しい結末を予想して
そのまま素通りしていく
そんな生活には飽き飽きした
胸の奥にしまい込んでいた苦い思いを
何のあてもなく解き放ってみる

無垢だと信じていた夢を救うためには
誰かの罪を被らねばならない
絶望と希望の間を行き交う人の流れは
僕の目にはとてもゆっくり映る
行ったきり帰ってこない人もいる
連れ戻してくるだけの余裕も無い

泣き声や叫び声や呻き声の中を
ゆっくりと静かに僕は通り抜ける
僕はここでは全くの異邦人だ
今日出会ったことと昨日出会わなかったことに
どれだけの違いがあるというのか
僕は彼らのことを何一つ知らない

誰にでも家が必要だ
好きなときに帰っていける場所が必要だ
存在を主張するためではなく
日常から逃れて安らぐための場所が必要だ
だが飢えと不安は人々を一瞬で変えてしまう
彼らは疑い、争い、略奪し、殺しあう
正当化することは出来ないが否定することも出来ない
これを現実と人は言う

ここで魂が清められるなどと誰が言ったのか

そして鉄を溶かすその熱が
更に人々を駆り立てていく
聖地を守るためと称して
銃を取らせ、見たこともない土地へ向かわせる
もっともらしい顔をした者が歓迎される
理念は空回りし、正義が交錯する
どこかで赤ん坊が腹をすかして泣いている
その子を捜している人はどこにもいない

だが僕はここで何かを見つけたい
今日の食事を心配する必要のないことが
明日を保障してくれる訳ではないように
今は見えていない振りをすることができても
いずれは高い代償を払うことになる
真実を見落としてしまえば
正気を保ち続けることは難しくなるのだから
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