Ray Davies "Working Man's Cafe" ― 2007/12/22 21:04
レイ・デイヴィスの新作『ワーキング・マンズ・カフェ(Working Man's Cafe)』を聴いた。
レイ・デイヴィスという人は、いうなれば「生涯一ロックン・ローラー」だ。その詩は良く「ひねくれた」と形容されるが、むしろ「厭世的」と言った方が合っているように思う。60年代から若者らしくない視点で物事を見ていたレイだけに、年を取ってもぶれようがない。
レイの追い求めているテーマは一貫して、「ここから抜け出したい」、だ。確かにロックにおける重要なテーマの一つではあるが、レイの場合、絶望するわけでもなく、希望を未来につなげるわけでもなく、ひたすらどうしようもない状況を歌う。
だが、不思議なのはリスナーを絶望に陥れるのではなく、「世の中なんて所詮そんなものだ」といった一種の開き直りで癒すような効果があることだ。レイの視点は一貫して弱者の側にある。今回の新作で改めてそのことを確認した。
レイ・デイヴィスという人は、いうなれば「生涯一ロックン・ローラー」だ。その詩は良く「ひねくれた」と形容されるが、むしろ「厭世的」と言った方が合っているように思う。60年代から若者らしくない視点で物事を見ていたレイだけに、年を取ってもぶれようがない。
レイの追い求めているテーマは一貫して、「ここから抜け出したい」、だ。確かにロックにおける重要なテーマの一つではあるが、レイの場合、絶望するわけでもなく、希望を未来につなげるわけでもなく、ひたすらどうしようもない状況を歌う。
だが、不思議なのはリスナーを絶望に陥れるのではなく、「世の中なんて所詮そんなものだ」といった一種の開き直りで癒すような効果があることだ。レイの視点は一貫して弱者の側にある。今回の新作で改めてそのことを確認した。
Bruce Springsteen "Magic" ~各曲目について(4) ― 2007/10/30 23:35
(昨日の続き)
10.ロング・ウォーク・ホーム (Long Walk Home)
このアルバムのハイライトだ。ライターの五十嵐正さんによれば、この曲はザ・シーガー・セッション・バンドとのツアー中のロンドンで、一晩で書き上げられ、翌日にライヴで披露されたということだ。確かにある種抑えがたい衝動に駆られたような勢いがある。「家までの長い道のりを歩いて帰ろう(It’s gonna be a long walk home)」というリフレインが感動的だ。ザ・シーガー・セッションで得たものが、見事に形になっている。伝承歌を見直すことで、ブルースの世界は一層広がったといえるだろう。
車を走らせていた主人公が見つけたのは、既に変わり果ててしまった故郷の姿だった。退役軍人館や、店仕舞いした商店街のイメージは『BORN IN THE U.S.A.(Born In The U.S.A.)』にダブる。かつての主人公は故郷をそのまま捨ててしまったが、今回は違う。主人公は車を捨ててまでも、真の故郷へ歩いていく決心をする。それがどれだけ時間がかかろうとも。「我々のあるべき姿、すべきこと、してはならないこと(Who we are, what we ‘ll do and what we won’t)」が示された世界、それが真の故郷だ。
11.デヴィルズ・アーケイド (Devil’s Arcade)
ラストを飾るこの曲は、最も難解な内容になっている。まるで映画のフラッシュ・バックのように様々なイメージが展開され、とてもドラマチックな仕上がりとなっている。
「悪魔のアーケード(Devil’s arcade)」とは、何を指しているのだろうか。また「デビルズ・アンド・ダスト」のイメージが蘇る。韻を踏んだフレーズの繰り返しは、三浦久さんがライナーに書かれているように、安易な意味付けを拒むかのように響く。
恐らく舞台は砂漠の戦場だろう。だが、それはイラクに限定されない。我々全ての人間が直面している危機を象徴するものとしての砂漠、ではないのか。「デビルズ・アンド・ダスト」では信仰と現実の間に悩む男の姿が描かれていたが、この曲の主人公は恐らく出口を見出している。それは「あなたの鼓動(The beat of your heart)」だ。
12.(シークレット・トラック)
最後に急遽付け加えられたのは、アルバム・リリースを待たずに亡くなった、ブルースの親友、テリー・マコヴァーンに捧げられたもの。ブルースがこのような行為をすることは、非常に珍しい。
とても物悲しい曲だ。「彼らが君を創った時、彼らは鋳型を壊したんだ(When they built you brother, they broke the mold)」と歌われるところでは、胸を締め付けられる思いがする。
----------------------------------------------------
今回このレヴューを書くため、短期間に何回もアルバムを聴いた。同じレコードをリピートすることは好きではないのだが、『マジック』に関しては全く気にならなかった。最初に聴いたときは、詩を読み取ることに精一杯で、細部まで気が廻らなかったが、聴き直すごとにどんどん印象が変わっていった。とにかくこのスケールの大きさは圧倒的だ。過去のどのアルバムより劇的要素に溢れている。
ブルース・スプリングスティーンは今年の9月で58歳になった。アルバムを聴く限り、とても信じられない。衰えを知らぬ探究心を抱え、進化し続けるその姿は、他に例える存在が思い浮かばない。
かつて彼のようなミュージシャンがいただろうか? 58歳のときにこれだけパワーのあるアルバムを作ったミュージシャンが? ボブ・ディランは? ポール・マッカートニーは? ミック・ジャガーは? ロジャー・ウォーターズは? 彼らとて衰えることのない創造力を持ち続けているが、これほど勢いのあるアルバムは作れなかったと断言する。
僕は20年以上ロックを聴き続けているが、ブルース・スプリングスティーンほど誠実なミュージシャンを他に知らない。
10.ロング・ウォーク・ホーム (Long Walk Home)
このアルバムのハイライトだ。ライターの五十嵐正さんによれば、この曲はザ・シーガー・セッション・バンドとのツアー中のロンドンで、一晩で書き上げられ、翌日にライヴで披露されたということだ。確かにある種抑えがたい衝動に駆られたような勢いがある。「家までの長い道のりを歩いて帰ろう(It’s gonna be a long walk home)」というリフレインが感動的だ。ザ・シーガー・セッションで得たものが、見事に形になっている。伝承歌を見直すことで、ブルースの世界は一層広がったといえるだろう。
車を走らせていた主人公が見つけたのは、既に変わり果ててしまった故郷の姿だった。退役軍人館や、店仕舞いした商店街のイメージは『BORN IN THE U.S.A.(Born In The U.S.A.)』にダブる。かつての主人公は故郷をそのまま捨ててしまったが、今回は違う。主人公は車を捨ててまでも、真の故郷へ歩いていく決心をする。それがどれだけ時間がかかろうとも。「我々のあるべき姿、すべきこと、してはならないこと(Who we are, what we ‘ll do and what we won’t)」が示された世界、それが真の故郷だ。
11.デヴィルズ・アーケイド (Devil’s Arcade)
ラストを飾るこの曲は、最も難解な内容になっている。まるで映画のフラッシュ・バックのように様々なイメージが展開され、とてもドラマチックな仕上がりとなっている。
「悪魔のアーケード(Devil’s arcade)」とは、何を指しているのだろうか。また「デビルズ・アンド・ダスト」のイメージが蘇る。韻を踏んだフレーズの繰り返しは、三浦久さんがライナーに書かれているように、安易な意味付けを拒むかのように響く。
恐らく舞台は砂漠の戦場だろう。だが、それはイラクに限定されない。我々全ての人間が直面している危機を象徴するものとしての砂漠、ではないのか。「デビルズ・アンド・ダスト」では信仰と現実の間に悩む男の姿が描かれていたが、この曲の主人公は恐らく出口を見出している。それは「あなたの鼓動(The beat of your heart)」だ。
12.(シークレット・トラック)
最後に急遽付け加えられたのは、アルバム・リリースを待たずに亡くなった、ブルースの親友、テリー・マコヴァーンに捧げられたもの。ブルースがこのような行為をすることは、非常に珍しい。
とても物悲しい曲だ。「彼らが君を創った時、彼らは鋳型を壊したんだ(When they built you brother, they broke the mold)」と歌われるところでは、胸を締め付けられる思いがする。
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今回このレヴューを書くため、短期間に何回もアルバムを聴いた。同じレコードをリピートすることは好きではないのだが、『マジック』に関しては全く気にならなかった。最初に聴いたときは、詩を読み取ることに精一杯で、細部まで気が廻らなかったが、聴き直すごとにどんどん印象が変わっていった。とにかくこのスケールの大きさは圧倒的だ。過去のどのアルバムより劇的要素に溢れている。
ブルース・スプリングスティーンは今年の9月で58歳になった。アルバムを聴く限り、とても信じられない。衰えを知らぬ探究心を抱え、進化し続けるその姿は、他に例える存在が思い浮かばない。
かつて彼のようなミュージシャンがいただろうか? 58歳のときにこれだけパワーのあるアルバムを作ったミュージシャンが? ボブ・ディランは? ポール・マッカートニーは? ミック・ジャガーは? ロジャー・ウォーターズは? 彼らとて衰えることのない創造力を持ち続けているが、これほど勢いのあるアルバムは作れなかったと断言する。
僕は20年以上ロックを聴き続けているが、ブルース・スプリングスティーンほど誠実なミュージシャンを他に知らない。
Bruce Springsteen "Magic" ~各曲目について(3) ― 2007/10/29 09:12
(昨日の続き)
7.アイル・ワーク・フォー・ユア・ラヴ (I’ll Work For You Love)
アルバム中唯一のラヴ・ソングともいえる曲。92年の『ラッキー・タウン(Lucky Town)』以降、ブルースの作品には聖書のイメージが頻繁に登場するようになったが、この曲もその一つだ。
「埃(Dust)」という単語が二回出てきており、「デビルズ・アンド・ダスト(Devils And Dust)」のイメージが再現される。主人公の愛する人(ここではテレサ)が酒を注ぐために払ったグラスの埃は、歳月ともに積もっていく心の埃と僕は解釈した。新たに清められたグラスから酒を飲むことで、主人公もまた浄化される。「文明の塵と愛の甘い残滓が、あなたの指を滑り落ち、雨のように降り注ぐ(The dust of civilizations and loves sweet remains slip off of your fingers and come driftin’ down like rain)」の箇所は難解だが、清濁併せ呑むような愛の偉大さを暗示しているのだろうか。
8.マジック (Magic)
アルバム・タイトル曲である。この曲だけEストリート・バンド主体ではなく、外部ミュージシャンの参加で作られている。
舞台に立つマジシャンの口を借りて語られるのは、幻惑されることが如何に簡単であるか、騙された結果取り返しがつかなくなることの恐ろしさである。自由が消え、恐怖が人々を支配し、死が人々を襲う。不気味なイメージを連ねた詩に、皮肉がたっぷり込められている。ブルースにしては珍しいタイプの曲。
9.ラスト・トゥ・ダイ (Last To Die)
辛辣さは更に増してくる。オープニングで、故郷に帰るため主人公が走らせていた車の行く手は、厳しい状況になってきた。外に見えるのは死のイメージばかりである。全てが崩壊していく中、恐怖に耐えながら主人公は出口を見出そうとする。
過ちを犯したのは誰なのか、誰が一体責任を取るのか、為政者が処罰されればそれで終わりなのか。答えは見つからない。
(更に明日へ続く)
7.アイル・ワーク・フォー・ユア・ラヴ (I’ll Work For You Love)
アルバム中唯一のラヴ・ソングともいえる曲。92年の『ラッキー・タウン(Lucky Town)』以降、ブルースの作品には聖書のイメージが頻繁に登場するようになったが、この曲もその一つだ。
「埃(Dust)」という単語が二回出てきており、「デビルズ・アンド・ダスト(Devils And Dust)」のイメージが再現される。主人公の愛する人(ここではテレサ)が酒を注ぐために払ったグラスの埃は、歳月ともに積もっていく心の埃と僕は解釈した。新たに清められたグラスから酒を飲むことで、主人公もまた浄化される。「文明の塵と愛の甘い残滓が、あなたの指を滑り落ち、雨のように降り注ぐ(The dust of civilizations and loves sweet remains slip off of your fingers and come driftin’ down like rain)」の箇所は難解だが、清濁併せ呑むような愛の偉大さを暗示しているのだろうか。
8.マジック (Magic)
アルバム・タイトル曲である。この曲だけEストリート・バンド主体ではなく、外部ミュージシャンの参加で作られている。
舞台に立つマジシャンの口を借りて語られるのは、幻惑されることが如何に簡単であるか、騙された結果取り返しがつかなくなることの恐ろしさである。自由が消え、恐怖が人々を支配し、死が人々を襲う。不気味なイメージを連ねた詩に、皮肉がたっぷり込められている。ブルースにしては珍しいタイプの曲。
9.ラスト・トゥ・ダイ (Last To Die)
辛辣さは更に増してくる。オープニングで、故郷に帰るため主人公が走らせていた車の行く手は、厳しい状況になってきた。外に見えるのは死のイメージばかりである。全てが崩壊していく中、恐怖に耐えながら主人公は出口を見出そうとする。
過ちを犯したのは誰なのか、誰が一体責任を取るのか、為政者が処罰されればそれで終わりなのか。答えは見つからない。
(更に明日へ続く)
Bruce Springsteen "Magic" ~各曲目について(2) ― 2007/10/28 16:26
(昨日の続き)
4.ユア・オウン・ワースト・エネミー (Your Own Worst Enemy)
「お前の最大の敵(Your own worst enemy)」とは、言うまでもなく自分自身のことであるが、ここで問題になっているのは、閉塞的状況にあるのは自分自身だけではなく、時代も社会もだということだ(「全てはひっくり返っている/Everything is upside down」、「全ては崩れかかっている/Everything is falling down」)。
曲の最後は「お前の旗は空高くはためいていた/それは吹き飛ばされ空の中へ消えていった(Your flag it flew so high/It drifted into the sky)」と締めくくられる。誇りが失われてしまうと立ち直るのは非常に困難になる。それは人も社会も同じこと。では我々はどうしたらいいのか。これに対する答えはアルバムの最後にさしかかると示される。
5.ジプシー・バイカー (Gypsy Biker)
ジプシー・バイカーとは主人公の友達だろう。「投資家達は金を儲けた/お前の流した血によって(The speculator made their money/On the blood you shed)」という出だしは実に辛辣だ。イラク戦争のにおいがここでもしている。恐らくジプシー・バイカーは戦死したのだ。母親は悲しみに暮れ、父親は酒に溺れてしまった。主人公も怒りの矛先を何処に向けたらいいのか分からない。
6.ガールズ・イン・ゼア・サマー・クローズ (Girls In Their Summer Clothes)
正にウォール・オブ・サウンド。若い頃、ブルースはフィル・スペクターのような音作りを目指して四苦八苦したそうだが(その様子は、『明日なき暴走』30周年記念ボックスのドキュメンタリーDVDに詳しい)、その試みはここで一つの完成形を見せている。
アルバムは一転して、追憶の世界に入る。夏の夜、恋人達が手をつないで歩き、子供達が遊ぶ街の中、主人公はその様を眺めている。将来の心配などすることのなかった時代の情景が鮮やかに蘇る。
(7曲目以降は明日の記事で)
4.ユア・オウン・ワースト・エネミー (Your Own Worst Enemy)
「お前の最大の敵(Your own worst enemy)」とは、言うまでもなく自分自身のことであるが、ここで問題になっているのは、閉塞的状況にあるのは自分自身だけではなく、時代も社会もだということだ(「全てはひっくり返っている/Everything is upside down」、「全ては崩れかかっている/Everything is falling down」)。
曲の最後は「お前の旗は空高くはためいていた/それは吹き飛ばされ空の中へ消えていった(Your flag it flew so high/It drifted into the sky)」と締めくくられる。誇りが失われてしまうと立ち直るのは非常に困難になる。それは人も社会も同じこと。では我々はどうしたらいいのか。これに対する答えはアルバムの最後にさしかかると示される。
5.ジプシー・バイカー (Gypsy Biker)
ジプシー・バイカーとは主人公の友達だろう。「投資家達は金を儲けた/お前の流した血によって(The speculator made their money/On the blood you shed)」という出だしは実に辛辣だ。イラク戦争のにおいがここでもしている。恐らくジプシー・バイカーは戦死したのだ。母親は悲しみに暮れ、父親は酒に溺れてしまった。主人公も怒りの矛先を何処に向けたらいいのか分からない。
6.ガールズ・イン・ゼア・サマー・クローズ (Girls In Their Summer Clothes)
正にウォール・オブ・サウンド。若い頃、ブルースはフィル・スペクターのような音作りを目指して四苦八苦したそうだが(その様子は、『明日なき暴走』30周年記念ボックスのドキュメンタリーDVDに詳しい)、その試みはここで一つの完成形を見せている。
アルバムは一転して、追憶の世界に入る。夏の夜、恋人達が手をつないで歩き、子供達が遊ぶ街の中、主人公はその様を眺めている。将来の心配などすることのなかった時代の情景が鮮やかに蘇る。
(7曲目以降は明日の記事で)
Bruce Springsteen "Magic" ~各曲目について(1) ― 2007/10/27 21:38
ブルース・スプリングスティーンの最新作『マジック』の各曲目について、今日から書いていくことにする。
1.レディオ・ノーウェア (Radio Nowhere)
ファースト・シングル。ギター・リフが鳴り響くエネルギー全開のハード・ドライヴィング・チューンだが、一聴するとロック・アンセムのようで、単純にそうとも言い切れない曲。
ラジオの音楽不毛状態を嘆くといえば、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの02年作品『ザ・ラスト・DJ(The Last DJ)』のタイトル曲を思い出すが、ブルースが歌うのは”Radio Nowhere”、何処にも無いラジオ局である。何処にも無いラジオ局、つまり孤独な主人公が、誰か生きている人間はいるのかと呼びかけている。良心的DJすらいないのである。
”I want a thousand guitars / I want pounding drums”の箇所は、84年の「ノー・サレンダー(No Surrender)」を思い出させる。そこではギターとドラムは、状況を打開する道具として主人公の手元にあったが、今はそれも無い。
毒にも薬にもならない音楽よりも、人と人との繋がりをもたらしてくれるものを求めて、主人公はひたすら車を走らせ、故郷に帰ろうとしている。ブルースの詩でいつも重要な役割を果たしてきた車が冒頭から登場するが、アルバムの終盤にさしかかると状況は変わっていくる。
このアルバムの基本設定として位置づけられる曲だ。
2.ユール・ビー・カミン・ダウン (You'll Be Comin' Down)
短いフレーズの連打でイメージを作り上げる手法は、三浦久さんがライナーでご指摘されているように、ボブ・ディランのそれを彷彿させる。具体的な事象についての歌ではないが、”Red Morning, then nothin' but gray skies”や、”The jacket you bought me gone daisy gray-blue”といった箇所は、同時多発テロを連想させる。
”Comin' down”という言葉をどう取るかは難しいところだが、「落ちぶれる」、「落ちてくる」と解釈するのが妥当だろう。現世の繁栄を謳歌している者も長くは続かないという警告はありふれていはいるが、同時多発テロのイメージと結びつけると、どうしてもジョージ・ブッシュに対する歌としてしまいそうになる。だが、ブルースが歌っているのは、そうした限定的な対象についてではないだろう。もっと普遍的なことについてと取るべきだ。
3.リヴィン・イン・ザ・フューチャー (Livin' In The Future)
往年のEストリート・バンドのR&Bっぽいノリが戻ってきたポップな曲調とは裏腹に、内容はいささかひねくれている。「我々は未来に住んでいる/このことはまだ起こっていない(We're livin' in the future and none of this has happened yet)」とは、主人公が現実から目をそむけているかのようにも取れる。
”Election Day”や、”My ship Liberty”といったフレーズは、政治的なニュアンスを感じさせ、04年大統領選についての歌とも解釈できる。ご存知の通り、ブルースは04年大統領選に際しては、「Vote For Change」ツアーに参加して民主党ジョン・ケリーへの投票を呼びかける行動をとっている。ブッシュ再選についてのブルースのコメントは出ず、翌年の『デビルズ・アンド・ダスト』はそれ以前に書かれた曲が収録されていたため、ブルース自身の心境は推し量ることが出来なかったが、今回ようやくそれらしきものが出てきたということか。
とすれば、「グランドキーパーがゲートを開け、野犬を放した(The groundskeeper opened the gates and let the wild dog run)」とは、共和党政権が継続されることで、イラク派兵が終わらないことを歌っているようだし、「俺は日没に町を駆け抜ける迷子のカウボーイ(I'm rollin' through town, a lost cowboy at sundown)」とは選挙結果に落胆したブルース自身の姿とも受け取れる。
(4曲目以降は明日の記事で)
1.レディオ・ノーウェア (Radio Nowhere)
ファースト・シングル。ギター・リフが鳴り響くエネルギー全開のハード・ドライヴィング・チューンだが、一聴するとロック・アンセムのようで、単純にそうとも言い切れない曲。
ラジオの音楽不毛状態を嘆くといえば、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの02年作品『ザ・ラスト・DJ(The Last DJ)』のタイトル曲を思い出すが、ブルースが歌うのは”Radio Nowhere”、何処にも無いラジオ局である。何処にも無いラジオ局、つまり孤独な主人公が、誰か生きている人間はいるのかと呼びかけている。良心的DJすらいないのである。
”I want a thousand guitars / I want pounding drums”の箇所は、84年の「ノー・サレンダー(No Surrender)」を思い出させる。そこではギターとドラムは、状況を打開する道具として主人公の手元にあったが、今はそれも無い。
毒にも薬にもならない音楽よりも、人と人との繋がりをもたらしてくれるものを求めて、主人公はひたすら車を走らせ、故郷に帰ろうとしている。ブルースの詩でいつも重要な役割を果たしてきた車が冒頭から登場するが、アルバムの終盤にさしかかると状況は変わっていくる。
このアルバムの基本設定として位置づけられる曲だ。
2.ユール・ビー・カミン・ダウン (You'll Be Comin' Down)
短いフレーズの連打でイメージを作り上げる手法は、三浦久さんがライナーでご指摘されているように、ボブ・ディランのそれを彷彿させる。具体的な事象についての歌ではないが、”Red Morning, then nothin' but gray skies”や、”The jacket you bought me gone daisy gray-blue”といった箇所は、同時多発テロを連想させる。
”Comin' down”という言葉をどう取るかは難しいところだが、「落ちぶれる」、「落ちてくる」と解釈するのが妥当だろう。現世の繁栄を謳歌している者も長くは続かないという警告はありふれていはいるが、同時多発テロのイメージと結びつけると、どうしてもジョージ・ブッシュに対する歌としてしまいそうになる。だが、ブルースが歌っているのは、そうした限定的な対象についてではないだろう。もっと普遍的なことについてと取るべきだ。
3.リヴィン・イン・ザ・フューチャー (Livin' In The Future)
往年のEストリート・バンドのR&Bっぽいノリが戻ってきたポップな曲調とは裏腹に、内容はいささかひねくれている。「我々は未来に住んでいる/このことはまだ起こっていない(We're livin' in the future and none of this has happened yet)」とは、主人公が現実から目をそむけているかのようにも取れる。
”Election Day”や、”My ship Liberty”といったフレーズは、政治的なニュアンスを感じさせ、04年大統領選についての歌とも解釈できる。ご存知の通り、ブルースは04年大統領選に際しては、「Vote For Change」ツアーに参加して民主党ジョン・ケリーへの投票を呼びかける行動をとっている。ブッシュ再選についてのブルースのコメントは出ず、翌年の『デビルズ・アンド・ダスト』はそれ以前に書かれた曲が収録されていたため、ブルース自身の心境は推し量ることが出来なかったが、今回ようやくそれらしきものが出てきたということか。
とすれば、「グランドキーパーがゲートを開け、野犬を放した(The groundskeeper opened the gates and let the wild dog run)」とは、共和党政権が継続されることで、イラク派兵が終わらないことを歌っているようだし、「俺は日没に町を駆け抜ける迷子のカウボーイ(I'm rollin' through town, a lost cowboy at sundown)」とは選挙結果に落胆したブルース自身の姿とも受け取れる。
(4曲目以降は明日の記事で)
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