Bruce Springsteen "Magic" ― 2007/10/26 23:15
一部で話題沸騰中である、ブルース・スプリングスティーンの新作『マジック(Magic)』を聴いた。昨日初めて聴いたばかりだが、今日の通勤と帰宅途中にも聴いたので、既に三回聴いている。05年に『デビルズ・アンド・ダスト(Devils And Dust)』、06年に『ウィー・シャル・オーヴァーカム:ザ・シーガー・セッションズ(We Shall Overcome:The Seeger Sessions)』、今年に入って『ライヴ・イン・ダブリン(Live In Dublin)』のCDとDVD、と近年のブルースの創作意欲は凄まじいものがある。80年代後半から90年代にかけての寡作ぶりが嘘みたいだ。
さて、『マジック』だが、昨日初めて聴いた直後の感想は、「一筋縄ではいかないアルバム」である。レコード会社は、84年の『BORN IN THE U.S.A.(Born In The U.S.A.)』以来の快作だ、と宣伝しているけれども、比較すべきものではないと思う。どちらかというと、『デビルズ・アンド・ダスト』の続篇のように僕には聴こえた。ブルースの苦悩は明らかに増している。前宣伝で受けた印象とは乖離してたというのが正直な感想だ。
サウンド的には、ブルース式ウォール・オブ・サウンドの完成形であろう。02年の『ザ・ライジング(The Rising)』でプロデュースとミックスがブレンダン・オブライエンに変わり、それまでのボブ・クリアマウンテンによる抜けの良い音から、各楽器の分離がはっきりしない混然とした音に変わったが、今回は更に強力になっている。感触としては、75年の『明日なき暴走(Born To Run)』に近い。ブルースのボーカルも若干埋もれ気味。でも、これは意図的にやったことだろう。
Eストリート・バンドの音も随分変わったと思う。デビュー当初はドタバタした音を出していたが、スティーヴ・ヴァン・ザントが加入してからは、まとまりのある引き締まって良く弾む演奏をするようになった。ヴァン・ザント脱退後は、ロイ・ビタンが主導でキーボード中心の音へ。そしてバンド再結成後のサウンドの核は、明らかにマックス・ワインバーグのドラムだ。今回もマックスのドラムが強力にバンドを牽引している。
個々の楽曲については、明日以降書いていくことにするが、特徴的なのは暗喩や隠喩が非常に多いこと。もともとブルースは、明確に言い切ってしまうような詩を書かない人だが、今回は難解な箇所が非常に多い。ライナーで訳者の三浦久さんが書いておられるが、意味を取ろうとすると、とたんに「?」となってしまうのだ。アルバム・リリースまでの限られた短い時間で翻訳をしなければならなった三浦さんのご苦労は想像に難くない。
先にも書いたが、全体的なトーンは明るくはない。サウンドが強力なので、見過ごしてしまいそうになるが、『闇に吠える街(Darkness On The Edge Of Town)』や『ザ・リヴァー(The River)』の頃のようなロマンチックな要素には乏しい。ドライだが意味深な要素が強く、そこが「一筋縄ではいかない」と評した所以である。
人それぞれ受ける印象は違うであろうが、とにかく僕の最初の印象は上記のようなものだ。続きは明日以降の記事で。
さて、『マジック』だが、昨日初めて聴いた直後の感想は、「一筋縄ではいかないアルバム」である。レコード会社は、84年の『BORN IN THE U.S.A.(Born In The U.S.A.)』以来の快作だ、と宣伝しているけれども、比較すべきものではないと思う。どちらかというと、『デビルズ・アンド・ダスト』の続篇のように僕には聴こえた。ブルースの苦悩は明らかに増している。前宣伝で受けた印象とは乖離してたというのが正直な感想だ。
サウンド的には、ブルース式ウォール・オブ・サウンドの完成形であろう。02年の『ザ・ライジング(The Rising)』でプロデュースとミックスがブレンダン・オブライエンに変わり、それまでのボブ・クリアマウンテンによる抜けの良い音から、各楽器の分離がはっきりしない混然とした音に変わったが、今回は更に強力になっている。感触としては、75年の『明日なき暴走(Born To Run)』に近い。ブルースのボーカルも若干埋もれ気味。でも、これは意図的にやったことだろう。
Eストリート・バンドの音も随分変わったと思う。デビュー当初はドタバタした音を出していたが、スティーヴ・ヴァン・ザントが加入してからは、まとまりのある引き締まって良く弾む演奏をするようになった。ヴァン・ザント脱退後は、ロイ・ビタンが主導でキーボード中心の音へ。そしてバンド再結成後のサウンドの核は、明らかにマックス・ワインバーグのドラムだ。今回もマックスのドラムが強力にバンドを牽引している。
個々の楽曲については、明日以降書いていくことにするが、特徴的なのは暗喩や隠喩が非常に多いこと。もともとブルースは、明確に言い切ってしまうような詩を書かない人だが、今回は難解な箇所が非常に多い。ライナーで訳者の三浦久さんが書いておられるが、意味を取ろうとすると、とたんに「?」となってしまうのだ。アルバム・リリースまでの限られた短い時間で翻訳をしなければならなった三浦さんのご苦労は想像に難くない。
先にも書いたが、全体的なトーンは明るくはない。サウンドが強力なので、見過ごしてしまいそうになるが、『闇に吠える街(Darkness On The Edge Of Town)』や『ザ・リヴァー(The River)』の頃のようなロマンチックな要素には乏しい。ドライだが意味深な要素が強く、そこが「一筋縄ではいかない」と評した所以である。
人それぞれ受ける印象は違うであろうが、とにかく僕の最初の印象は上記のようなものだ。続きは明日以降の記事で。
KT Tunstall "Drastic Fantastic" ― 2007/10/16 21:59
新譜レヴューというには少し遅いかもしれないが、先月、満を持してリリースされた、KT・タンストールのセカンド・アルバムについて書く。
近年、音楽雑誌など全く読まなくなってしまったので、新しいアーティストの情報にすっかり疎くなってしまった。KTを知ったのは、テレビ朝日の『ベストヒットU.S.A.』である。「サドゥンリー・アイ・シー(Suddenly I See)」のPVを観て、面白い女性ロッカーが出てきたという印象を持った。その後何日か、妙にその曲が心に残っていたので、試しにアルバムを買ってみた。「試し」に買うというのも乱暴な話だが、要するに一種の賭けである。
漠然としていたものが確信に変わった。久々に、本当の意味で、書いて歌うことのできるミュージシャンが出てきたと思った。間違いなく彼女は、十年に一人出てくるかどうかという才能の持ち主である。その卓越したソング・ライティングのセンスに加えて、自己の作品をきちんと掘り下げることのできる洞察力、そして表現力と文句のつけようがない。
セカンド・アルバムが出ると知って、即購入した。一聴した感想は、サクッと直球勝負に出たか、というものだった。よりオープンな雰囲気で、短めの曲で畳み掛けてくる。40分に満たないアルバムなので、尚更そう感じたのかもしれない。だが、聴き込んでくると、少し印象が変わった。
純粋な新曲は少ないようだが、やはりソング・ライティングの上手さが際立っている。弾き語り+α、といった感じもあった前作に比べると、バンド・サウンドが板についてきているが、曲中ギター・ソロなどは無い。要するに歌だけで勝負している訳で、とにかく展開が上手く、飽きさせない。メロディーの良さも特筆すべき点だ。個人的には6曲目「ホープレス(Hopeless)」をベスト・トラックに挙げておく。9曲目「ビューティー・オブ・アンサーテンティー(Beauty Of Uncertainty)」は新境地ともいうべき曲調で、今後のスケール・アップを予感させる。
少しあっさりしている感じは残るが、アーティストとして順調に成長している様子が伺え、好盤である。とにかく、KT・タンストールからは、当分目が離せそうに無い。
近年、音楽雑誌など全く読まなくなってしまったので、新しいアーティストの情報にすっかり疎くなってしまった。KTを知ったのは、テレビ朝日の『ベストヒットU.S.A.』である。「サドゥンリー・アイ・シー(Suddenly I See)」のPVを観て、面白い女性ロッカーが出てきたという印象を持った。その後何日か、妙にその曲が心に残っていたので、試しにアルバムを買ってみた。「試し」に買うというのも乱暴な話だが、要するに一種の賭けである。
漠然としていたものが確信に変わった。久々に、本当の意味で、書いて歌うことのできるミュージシャンが出てきたと思った。間違いなく彼女は、十年に一人出てくるかどうかという才能の持ち主である。その卓越したソング・ライティングのセンスに加えて、自己の作品をきちんと掘り下げることのできる洞察力、そして表現力と文句のつけようがない。
セカンド・アルバムが出ると知って、即購入した。一聴した感想は、サクッと直球勝負に出たか、というものだった。よりオープンな雰囲気で、短めの曲で畳み掛けてくる。40分に満たないアルバムなので、尚更そう感じたのかもしれない。だが、聴き込んでくると、少し印象が変わった。
純粋な新曲は少ないようだが、やはりソング・ライティングの上手さが際立っている。弾き語り+α、といった感じもあった前作に比べると、バンド・サウンドが板についてきているが、曲中ギター・ソロなどは無い。要するに歌だけで勝負している訳で、とにかく展開が上手く、飽きさせない。メロディーの良さも特筆すべき点だ。個人的には6曲目「ホープレス(Hopeless)」をベスト・トラックに挙げておく。9曲目「ビューティー・オブ・アンサーテンティー(Beauty Of Uncertainty)」は新境地ともいうべき曲調で、今後のスケール・アップを予感させる。
少しあっさりしている感じは残るが、アーティストとして順調に成長している様子が伺え、好盤である。とにかく、KT・タンストールからは、当分目が離せそうに無い。
Joni Mitchell "Shine" ― 2007/10/04 21:18
02年に音楽活動から引退を表明していたジョニ・ミッチェルが新作をレコーディング中であるというニュースには驚きを覚えると同時に嬉しさを禁じえなかった。それからこうして無事にニュー・アルバム『シャイン(Shine)』が我々の元に届けられたわけだが、前作『トラヴェローグ(Travelogue)』はオーケストラをバックに自作を再演したセルフ・カバー・アルバムであり、その時点でジョニの新曲は98年の『テイミング・ザ・タイガー(Taming The Tiger)』以来聴くことが出来なかったから、純粋な新作としては実に9年ぶりということになる。
ポール・マッカートニーが契約第一弾アーティストとして話題になった新レーベル、ヒア・ミュージックからのリリースいうことも興味深い。このレーベルについてはあまり多くを知らないのだが、いわゆる「グッド・ミュージック」をリスナーに届けていこうという姿勢は好感が持てる。音楽業界にすっかり嫌気がさしていたジョニもこのレーベルなら、と納得して契約したのだろう。とにかくジョニ・ミッチェルの新作を再び聴くことができるのはこの上ない喜びである。ちなみにジョニは契約第二弾アーティストであるとのこと。
この時代に全10曲、トータル約47分というのもいかにもジョニらしい。何でもかんでも詰め込めるだけ詰め込んで、ボーナストラックまでつけるようなやり方は音楽の大量消費に他ならない。昔のLPが長くとも大体50分だったのは、人間の集中力の持続可能時間から考えても実に妥当な線だったと思う。ミュージシャンが作品を吟味して効果的に聴かせようとすればこうなるのは自然なことだ。
プロデュースはジョニ自身で、基本的に全ての楽器をジョニが演奏し、ペダル・スティールやサックス、ドラムやベースで他のミュージシャンが所々参加するという形式をとっている。音楽から離れて絵画に没頭していたというジョニが自然発生的に音楽を紡ぎ出していった様子が伺える。
内容は90年代の諸作にも増して現代社会に対する痛烈な批判が中心となっている。環境破壊、戦争、利益至上主義をジョニらしい視点で、だが分かりやすい言葉で歌っている(携帯電話に関して皮肉を入れている辺りは個人的に共感を覚える)。人間らしく生きることとは?と問い掛ける姿勢は真摯そのものだ。
一番興味深い曲は、「イフ(If)」で、これは19世紀イギリスの小説家・詩人であるキプリングの詩に曲をつけたもの。生きる意志を保つ為の心得を淡々と説いている詩だが、この時代に最もふさわしい内容だと思う。「あなたには闘志があるし、あなたには見識もある(”You've got the fight / You've got the insight”)」と歌うとそこでプツリと切れてアルバムは終わる。我々に必要なものは何なのか諭すように、また自分自身に言い聞かせているようにも聞こえる。
前作までは感じられた妙な老成感が今回はあまり無いのも特筆すべきところだろうか。もちろん声の衰えはあるにせよ、微妙に実験的な音作りをしていて新鮮なのである。今年64歳になるジョニが軽やかに跳躍してみせる様は実に痛快ではないか。
ジョニ・ミッチェル復帰第一作は期待に違わなかったどころか、それ以上の仕上がりであった。必聴である。
ポール・マッカートニーが契約第一弾アーティストとして話題になった新レーベル、ヒア・ミュージックからのリリースいうことも興味深い。このレーベルについてはあまり多くを知らないのだが、いわゆる「グッド・ミュージック」をリスナーに届けていこうという姿勢は好感が持てる。音楽業界にすっかり嫌気がさしていたジョニもこのレーベルなら、と納得して契約したのだろう。とにかくジョニ・ミッチェルの新作を再び聴くことができるのはこの上ない喜びである。ちなみにジョニは契約第二弾アーティストであるとのこと。
この時代に全10曲、トータル約47分というのもいかにもジョニらしい。何でもかんでも詰め込めるだけ詰め込んで、ボーナストラックまでつけるようなやり方は音楽の大量消費に他ならない。昔のLPが長くとも大体50分だったのは、人間の集中力の持続可能時間から考えても実に妥当な線だったと思う。ミュージシャンが作品を吟味して効果的に聴かせようとすればこうなるのは自然なことだ。
プロデュースはジョニ自身で、基本的に全ての楽器をジョニが演奏し、ペダル・スティールやサックス、ドラムやベースで他のミュージシャンが所々参加するという形式をとっている。音楽から離れて絵画に没頭していたというジョニが自然発生的に音楽を紡ぎ出していった様子が伺える。
内容は90年代の諸作にも増して現代社会に対する痛烈な批判が中心となっている。環境破壊、戦争、利益至上主義をジョニらしい視点で、だが分かりやすい言葉で歌っている(携帯電話に関して皮肉を入れている辺りは個人的に共感を覚える)。人間らしく生きることとは?と問い掛ける姿勢は真摯そのものだ。
一番興味深い曲は、「イフ(If)」で、これは19世紀イギリスの小説家・詩人であるキプリングの詩に曲をつけたもの。生きる意志を保つ為の心得を淡々と説いている詩だが、この時代に最もふさわしい内容だと思う。「あなたには闘志があるし、あなたには見識もある(”You've got the fight / You've got the insight”)」と歌うとそこでプツリと切れてアルバムは終わる。我々に必要なものは何なのか諭すように、また自分自身に言い聞かせているようにも聞こえる。
前作までは感じられた妙な老成感が今回はあまり無いのも特筆すべきところだろうか。もちろん声の衰えはあるにせよ、微妙に実験的な音作りをしていて新鮮なのである。今年64歳になるジョニが軽やかに跳躍してみせる様は実に痛快ではないか。
ジョニ・ミッチェル復帰第一作は期待に違わなかったどころか、それ以上の仕上がりであった。必聴である。
Mark Knopfler "Kill To Get Crimson" ― 2007/09/30 16:37
旧作ばかりでなく新譜についても書くことにする。
マーク・ノップラーの7作目のアルバム『Kill To Get Crimson』が発表された。前作と前々作はエミルー・ハリスとのコラボレーションだったから、純粋なソロ作としては5作目となる。プロデュースはマーク自身と、1作目からの付き合いになるチャック・エインリー、それに盟友ガイ・フレッチャーが加わっている。
今作はバンドメンバーに変更があり、キーボードのジム・コックスが抜け、ドラムがチャド・クロムウェルからダニー・カミングスに代わっている。それとアルバム中のギター・ソロはリチャード・ベネットの音のように聴こえるのだが、何故かクレジットからは彼の名前は消えている。ここらへんの事情は分からない。それとウッドウィンドでクリス・ホワイトが参加しているのがダイアー・ストレイツからのファンとしては嬉しい。
サウンド面で特筆すべきは、僕の耳に間違いがなければ、マークが殆どギター・ソロをとっていないことだ。前述のように、ギター・ソロはほぼリチャード・ベネットが弾いているように聴こえる。『ラグピッカーズ・ドリーム(The Ragpicker's Dream)』あたりからの傾向だが、マークの歌メロ重視がより強固になった印象を受ける。ディランやJ.J.ケイルのような歌い方はもはや聴かれない。
全体としては前作からの傾向を引き継いでいるが、新境地も垣間見ることができる。一曲目の「True Love Will Never Fade」なんかBメロのコード進行とメロディーだけ聴いていると、ブルース・スプリングスティーンみたいだ。
続く「The Scaffolder's Wife」のAメロ出だしの不安定なコード進行も今までなかった試みだ。すごく新鮮である。
三曲目「The Fizzy And The Still」では何故かポール・マッカートニーを連想してしまった。
七曲目の「Punish The Monkey」では、タイトルが似ていることもあって、ピーター・ガブリエルの「ショック・ザ・モンキー(Shock The Monkey)」を思い出した。サウンドは全然違うのだけれども、コーラスの入り方などそれっぽいところもある。
その他にもブルース・コード進行に則りながらも、加えられているひねりが面白い「The Fish And The Bird」、マーク節全開の必殺バラード「In The Sky」など聴き所は満載である。
エミルー・ハリスとのコラボレーションはそうでもなかったけれど、もはやマークは大きなサウンドには興味が無いみたいだ。純粋に歌が作り出す世界を最小限の音で補強しているような感じだ。ものすごく地味だけれども、慈愛に満ちている。こういう音作りをするミュージシャンが少なくなった今、マークのコンスタントな活動ぶりは本当に嬉しい。
P.S.何故日本では国内盤が発売されないのでしょうか?こんな良質の音楽を広めようとしないのは犯罪です。
マーク・ノップラーの7作目のアルバム『Kill To Get Crimson』が発表された。前作と前々作はエミルー・ハリスとのコラボレーションだったから、純粋なソロ作としては5作目となる。プロデュースはマーク自身と、1作目からの付き合いになるチャック・エインリー、それに盟友ガイ・フレッチャーが加わっている。
今作はバンドメンバーに変更があり、キーボードのジム・コックスが抜け、ドラムがチャド・クロムウェルからダニー・カミングスに代わっている。それとアルバム中のギター・ソロはリチャード・ベネットの音のように聴こえるのだが、何故かクレジットからは彼の名前は消えている。ここらへんの事情は分からない。それとウッドウィンドでクリス・ホワイトが参加しているのがダイアー・ストレイツからのファンとしては嬉しい。
サウンド面で特筆すべきは、僕の耳に間違いがなければ、マークが殆どギター・ソロをとっていないことだ。前述のように、ギター・ソロはほぼリチャード・ベネットが弾いているように聴こえる。『ラグピッカーズ・ドリーム(The Ragpicker's Dream)』あたりからの傾向だが、マークの歌メロ重視がより強固になった印象を受ける。ディランやJ.J.ケイルのような歌い方はもはや聴かれない。
全体としては前作からの傾向を引き継いでいるが、新境地も垣間見ることができる。一曲目の「True Love Will Never Fade」なんかBメロのコード進行とメロディーだけ聴いていると、ブルース・スプリングスティーンみたいだ。
続く「The Scaffolder's Wife」のAメロ出だしの不安定なコード進行も今までなかった試みだ。すごく新鮮である。
三曲目「The Fizzy And The Still」では何故かポール・マッカートニーを連想してしまった。
七曲目の「Punish The Monkey」では、タイトルが似ていることもあって、ピーター・ガブリエルの「ショック・ザ・モンキー(Shock The Monkey)」を思い出した。サウンドは全然違うのだけれども、コーラスの入り方などそれっぽいところもある。
その他にもブルース・コード進行に則りながらも、加えられているひねりが面白い「The Fish And The Bird」、マーク節全開の必殺バラード「In The Sky」など聴き所は満載である。
エミルー・ハリスとのコラボレーションはそうでもなかったけれど、もはやマークは大きなサウンドには興味が無いみたいだ。純粋に歌が作り出す世界を最小限の音で補強しているような感じだ。ものすごく地味だけれども、慈愛に満ちている。こういう音作りをするミュージシャンが少なくなった今、マークのコンスタントな活動ぶりは本当に嬉しい。
P.S.何故日本では国内盤が発売されないのでしょうか?こんな良質の音楽を広めようとしないのは犯罪です。
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