Jan Garbarek Group "Twelve Moons" ― 2007/10/20 20:21

Jan Garbarek Group "Twelve Moons"
ドイツのレコード・レーベルであるECM(Editon For Contemporary Music)は、キース・ジャレットの諸作で有名だが、その他にも数多くの優れたミュージシャンの作品をリリースしている。初期のパット・メセニーなんかもそうだし、チック・コリア、ポール・ブレイ、ジョン・アバークロンビー、ラルフ・タウナー、エグベルト・ジスモンチ、エバーハルト・ウェーバーなど枚挙にいとまない。

中でも、ノルウェーのサックス奏者であるヤン・ガルバレクは、キース・ジャレットの『マイ・ソング(My Song)』への参加で有名だが、ECMへはレーベルの初期から関わっており、リーダー作を数多く発表している。そして、レーベル発足以来の500番目の記念すべきアルバムとしてリリースされたのが、ガルバレクのこの『トゥエルブ・ムーン(Twelve Moons)』である。

ECMというレーベルは、キース・ジャレットがスタンダード・トリオを始めるまでは、いわゆる通常イメージされるようなジャズとは一味も二味も違う種類の音楽を扱っていて、独特のレーベル・カラーを築いてきた。ヤン・ガルバレクは、そうしたECMの姿勢を最も明確に体現しているミュージシャンであると思う。

僕がこの『トゥエルブ・ムーン』を初めて聴いたのは、大学を卒業する前の年だったと記憶しているが、それまでパット・メセニー一色だった僕の音楽生活を一変させてしまうくらいのインパクトがあった。レコード・ショップで何気に手にしたアルバムだったのだが、今や僕の人生における最重要アルバムの一つとなっている。

一曲目を聴いたとき、これこそが自分が本当に聴きたいと思っていた音楽だと、心底思った。二十年と少し生きてきて、ようやくそういう音楽に出会うことが出来た、という喜びで全身満たされたのを覚えている。本当に涙が出るくらい嬉しかったのである。実に不思議な体験だった。出会いとは奇蹟そのものだ。それ以降同じような経験は、二度としていない。

ドラムにマヌ・カッチェが参加していることもあってか、ポップな感じもする。シンセサイザーの使い方は明らかにロックやポップスのそれである(ジョー・ザヴィヌルなんかとは違うという意味で)。なのに、何故か「自然」な音に聴こえる。人類の始祖は辿っていくと「ルーシー」に行き着く訳だが、音楽の根源とは何だろうと辿っていくガルバレクの探究心が、束の間その終着地を、音楽の「ルーシー」を垣間見せてくれるような、そんな感覚に陥るのだ。手段と目的の問題か。

ワールド・ミュージックという言葉は、今やすっかり廃れてしまったが(このことについては後日また改めて書こうと思う)、ガルバレクの音楽はジャンル不明というよりは、どこの国の音楽でもない、真の意味での「ワールド・ミュージック」といえるものである。共通言語としての音楽は確かに存在する。その証明として、僕はこのアルバムを挙げたい。
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