Bruce Springsteen "Magic" ~各曲目について(3) ― 2007/10/29 09:12

(昨日の続き)


7.アイル・ワーク・フォー・ユア・ラヴ (I’ll Work For You Love)

 アルバム中唯一のラヴ・ソングともいえる曲。92年の『ラッキー・タウン(Lucky Town)』以降、ブルースの作品には聖書のイメージが頻繁に登場するようになったが、この曲もその一つだ。

「埃(Dust)」という単語が二回出てきており、「デビルズ・アンド・ダスト(Devils And Dust)」のイメージが再現される。主人公の愛する人(ここではテレサ)が酒を注ぐために払ったグラスの埃は、歳月ともに積もっていく心の埃と僕は解釈した。新たに清められたグラスから酒を飲むことで、主人公もまた浄化される。「文明の塵と愛の甘い残滓が、あなたの指を滑り落ち、雨のように降り注ぐ(The dust of civilizations and loves sweet remains slip off of your fingers and come driftin’ down like rain)」の箇所は難解だが、清濁併せ呑むような愛の偉大さを暗示しているのだろうか。


8.マジック (Magic)

 アルバム・タイトル曲である。この曲だけEストリート・バンド主体ではなく、外部ミュージシャンの参加で作られている。

 舞台に立つマジシャンの口を借りて語られるのは、幻惑されることが如何に簡単であるか、騙された結果取り返しがつかなくなることの恐ろしさである。自由が消え、恐怖が人々を支配し、死が人々を襲う。不気味なイメージを連ねた詩に、皮肉がたっぷり込められている。ブルースにしては珍しいタイプの曲。


9.ラスト・トゥ・ダイ (Last To Die)

 辛辣さは更に増してくる。オープニングで、故郷に帰るため主人公が走らせていた車の行く手は、厳しい状況になってきた。外に見えるのは死のイメージばかりである。全てが崩壊していく中、恐怖に耐えながら主人公は出口を見出そうとする。

 過ちを犯したのは誰なのか、誰が一体責任を取るのか、為政者が処罰されればそれで終わりなのか。答えは見つからない。


(更に明日へ続く)
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