Bruce Springsteen "Magic" ~各曲目について(2) ― 2007/10/28 16:26

(昨日の続き)

4.ユア・オウン・ワースト・エネミー (Your Own Worst Enemy)

 「お前の最大の敵(Your own worst enemy)」とは、言うまでもなく自分自身のことであるが、ここで問題になっているのは、閉塞的状況にあるのは自分自身だけではなく、時代も社会もだということだ(「全てはひっくり返っている/Everything is upside down」、「全ては崩れかかっている/Everything is falling down」)。

 曲の最後は「お前の旗は空高くはためいていた/それは吹き飛ばされ空の中へ消えていった(Your flag it flew so high/It drifted into the sky)」と締めくくられる。誇りが失われてしまうと立ち直るのは非常に困難になる。それは人も社会も同じこと。では我々はどうしたらいいのか。これに対する答えはアルバムの最後にさしかかると示される。


5.ジプシー・バイカー (Gypsy Biker)

 ジプシー・バイカーとは主人公の友達だろう。「投資家達は金を儲けた/お前の流した血によって(The speculator made their money/On the blood you shed)」という出だしは実に辛辣だ。イラク戦争のにおいがここでもしている。恐らくジプシー・バイカーは戦死したのだ。母親は悲しみに暮れ、父親は酒に溺れてしまった。主人公も怒りの矛先を何処に向けたらいいのか分からない。


6.ガールズ・イン・ゼア・サマー・クローズ (Girls In Their Summer Clothes)

 正にウォール・オブ・サウンド。若い頃、ブルースはフィル・スペクターのような音作りを目指して四苦八苦したそうだが(その様子は、『明日なき暴走』30周年記念ボックスのドキュメンタリーDVDに詳しい)、その試みはここで一つの完成形を見せている。

 アルバムは一転して、追憶の世界に入る。夏の夜、恋人達が手をつないで歩き、子供達が遊ぶ街の中、主人公はその様を眺めている。将来の心配などすることのなかった時代の情景が鮮やかに蘇る。


(7曲目以降は明日の記事で)
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