Bruce Springsteen "Magic" ~各曲目について(4) ― 2007/10/30 23:35
(昨日の続き)
10.ロング・ウォーク・ホーム (Long Walk Home)
このアルバムのハイライトだ。ライターの五十嵐正さんによれば、この曲はザ・シーガー・セッション・バンドとのツアー中のロンドンで、一晩で書き上げられ、翌日にライヴで披露されたということだ。確かにある種抑えがたい衝動に駆られたような勢いがある。「家までの長い道のりを歩いて帰ろう(It’s gonna be a long walk home)」というリフレインが感動的だ。ザ・シーガー・セッションで得たものが、見事に形になっている。伝承歌を見直すことで、ブルースの世界は一層広がったといえるだろう。
車を走らせていた主人公が見つけたのは、既に変わり果ててしまった故郷の姿だった。退役軍人館や、店仕舞いした商店街のイメージは『BORN IN THE U.S.A.(Born In The U.S.A.)』にダブる。かつての主人公は故郷をそのまま捨ててしまったが、今回は違う。主人公は車を捨ててまでも、真の故郷へ歩いていく決心をする。それがどれだけ時間がかかろうとも。「我々のあるべき姿、すべきこと、してはならないこと(Who we are, what we ‘ll do and what we won’t)」が示された世界、それが真の故郷だ。
11.デヴィルズ・アーケイド (Devil’s Arcade)
ラストを飾るこの曲は、最も難解な内容になっている。まるで映画のフラッシュ・バックのように様々なイメージが展開され、とてもドラマチックな仕上がりとなっている。
「悪魔のアーケード(Devil’s arcade)」とは、何を指しているのだろうか。また「デビルズ・アンド・ダスト」のイメージが蘇る。韻を踏んだフレーズの繰り返しは、三浦久さんがライナーに書かれているように、安易な意味付けを拒むかのように響く。
恐らく舞台は砂漠の戦場だろう。だが、それはイラクに限定されない。我々全ての人間が直面している危機を象徴するものとしての砂漠、ではないのか。「デビルズ・アンド・ダスト」では信仰と現実の間に悩む男の姿が描かれていたが、この曲の主人公は恐らく出口を見出している。それは「あなたの鼓動(The beat of your heart)」だ。
12.(シークレット・トラック)
最後に急遽付け加えられたのは、アルバム・リリースを待たずに亡くなった、ブルースの親友、テリー・マコヴァーンに捧げられたもの。ブルースがこのような行為をすることは、非常に珍しい。
とても物悲しい曲だ。「彼らが君を創った時、彼らは鋳型を壊したんだ(When they built you brother, they broke the mold)」と歌われるところでは、胸を締め付けられる思いがする。
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今回このレヴューを書くため、短期間に何回もアルバムを聴いた。同じレコードをリピートすることは好きではないのだが、『マジック』に関しては全く気にならなかった。最初に聴いたときは、詩を読み取ることに精一杯で、細部まで気が廻らなかったが、聴き直すごとにどんどん印象が変わっていった。とにかくこのスケールの大きさは圧倒的だ。過去のどのアルバムより劇的要素に溢れている。
ブルース・スプリングスティーンは今年の9月で58歳になった。アルバムを聴く限り、とても信じられない。衰えを知らぬ探究心を抱え、進化し続けるその姿は、他に例える存在が思い浮かばない。
かつて彼のようなミュージシャンがいただろうか? 58歳のときにこれだけパワーのあるアルバムを作ったミュージシャンが? ボブ・ディランは? ポール・マッカートニーは? ミック・ジャガーは? ロジャー・ウォーターズは? 彼らとて衰えることのない創造力を持ち続けているが、これほど勢いのあるアルバムは作れなかったと断言する。
僕は20年以上ロックを聴き続けているが、ブルース・スプリングスティーンほど誠実なミュージシャンを他に知らない。
10.ロング・ウォーク・ホーム (Long Walk Home)
このアルバムのハイライトだ。ライターの五十嵐正さんによれば、この曲はザ・シーガー・セッション・バンドとのツアー中のロンドンで、一晩で書き上げられ、翌日にライヴで披露されたということだ。確かにある種抑えがたい衝動に駆られたような勢いがある。「家までの長い道のりを歩いて帰ろう(It’s gonna be a long walk home)」というリフレインが感動的だ。ザ・シーガー・セッションで得たものが、見事に形になっている。伝承歌を見直すことで、ブルースの世界は一層広がったといえるだろう。
車を走らせていた主人公が見つけたのは、既に変わり果ててしまった故郷の姿だった。退役軍人館や、店仕舞いした商店街のイメージは『BORN IN THE U.S.A.(Born In The U.S.A.)』にダブる。かつての主人公は故郷をそのまま捨ててしまったが、今回は違う。主人公は車を捨ててまでも、真の故郷へ歩いていく決心をする。それがどれだけ時間がかかろうとも。「我々のあるべき姿、すべきこと、してはならないこと(Who we are, what we ‘ll do and what we won’t)」が示された世界、それが真の故郷だ。
11.デヴィルズ・アーケイド (Devil’s Arcade)
ラストを飾るこの曲は、最も難解な内容になっている。まるで映画のフラッシュ・バックのように様々なイメージが展開され、とてもドラマチックな仕上がりとなっている。
「悪魔のアーケード(Devil’s arcade)」とは、何を指しているのだろうか。また「デビルズ・アンド・ダスト」のイメージが蘇る。韻を踏んだフレーズの繰り返しは、三浦久さんがライナーに書かれているように、安易な意味付けを拒むかのように響く。
恐らく舞台は砂漠の戦場だろう。だが、それはイラクに限定されない。我々全ての人間が直面している危機を象徴するものとしての砂漠、ではないのか。「デビルズ・アンド・ダスト」では信仰と現実の間に悩む男の姿が描かれていたが、この曲の主人公は恐らく出口を見出している。それは「あなたの鼓動(The beat of your heart)」だ。
12.(シークレット・トラック)
最後に急遽付け加えられたのは、アルバム・リリースを待たずに亡くなった、ブルースの親友、テリー・マコヴァーンに捧げられたもの。ブルースがこのような行為をすることは、非常に珍しい。
とても物悲しい曲だ。「彼らが君を創った時、彼らは鋳型を壊したんだ(When they built you brother, they broke the mold)」と歌われるところでは、胸を締め付けられる思いがする。
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今回このレヴューを書くため、短期間に何回もアルバムを聴いた。同じレコードをリピートすることは好きではないのだが、『マジック』に関しては全く気にならなかった。最初に聴いたときは、詩を読み取ることに精一杯で、細部まで気が廻らなかったが、聴き直すごとにどんどん印象が変わっていった。とにかくこのスケールの大きさは圧倒的だ。過去のどのアルバムより劇的要素に溢れている。
ブルース・スプリングスティーンは今年の9月で58歳になった。アルバムを聴く限り、とても信じられない。衰えを知らぬ探究心を抱え、進化し続けるその姿は、他に例える存在が思い浮かばない。
かつて彼のようなミュージシャンがいただろうか? 58歳のときにこれだけパワーのあるアルバムを作ったミュージシャンが? ボブ・ディランは? ポール・マッカートニーは? ミック・ジャガーは? ロジャー・ウォーターズは? 彼らとて衰えることのない創造力を持ち続けているが、これほど勢いのあるアルバムは作れなかったと断言する。
僕は20年以上ロックを聴き続けているが、ブルース・スプリングスティーンほど誠実なミュージシャンを他に知らない。
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